PBN No.133コラム「パラグアイの遺跡、”イエズス会伝道村”巡り」
17世紀、イエズス会宣教のため、多くの宣教師がパラグアイに足を踏み入れた。彼らは、地元の原住民を指揮し、数多くの”ミッション村(イエズス会伝道村)“をつくり、布教活動や教育を行った。当時建設された建物群はパラグアイの歴史を語る上で重要なものとして、現在まで残されている。
今回は数あるミッション村の中から、世界文化遺産として認められた2つを紹介する。
トリニダー・デル・パラナ遺跡:
18世紀初期に建設されたトリニダー遺跡は、地域に30カ所あるミッション村のうち、最も重要な建造物のひとつである。中央には広場があり、それを囲うように教会、公園、学校、アトリエ、インディオの住居、墓地、野菜畑や果樹園が配置されている。正面に巨大な大聖堂の跡地が見え、その優れた生活ぶりが伺える。
ヘスス・デ・タバラングエ遺跡:
トリニダー遺跡から車で約15分の場所にあるヘスス遺跡は、イエズス会が最後に造り、そして未完成に終わった遺跡である。入り口からは広大な広場と、目の前に林が見える。その先を超えると、巨大な遺跡が現れる。イエズス会の発展は著しかったため、当時の支配者の目の敵となり、1767年、スペインによるイエズス会追放により、パラグアイからの撤退を余儀なくされた。
イエズス会がここまで発展できた背景の一つに、グアラニー族の協力がある。彼らは、原住民族であるグアラニー族の文化と習慣を尊重し、グアラニー語の利用も許したため、お互いに良い関係を築くことができた。また、彼らが文字を持たないグアラニー語をスペイン語表記で記録したことで、パラグアイの公用語として、今日まで残されている背景もある。
両遺跡群は、エンカルナシオンとピラポ移住地のちょうど中央に位置している。広大な敷地に佇む遺跡の姿は圧巻だ。訪れた日は観光客も少なかったため、ゆっくりと見て回ることができた。また、映画”ミッション(原題:The Mission)”では、パラナ川流域のパラグアイ付近を舞台にした宣教師とグアラニー族の物語が描かれている。訪れる前に視聴すればより一層、歴史的風情を感じられること間違いなしだ。
こういった観光地では、遺跡を見た後に、周囲の土産屋で買い物や、カフェで一休みしたりと、その余波を楽しむのが常であるが、この周りにはそういった店舗が見当たらないのが少し残念だった。小さなホテルはいくつかあるが、宿泊旅行を考える際は、エンカルナシオン に拠点を置くのがおすすめである。JA
トリニダー遺跡の大聖堂跡
エントランス前にはホテルもあり、宿泊可能
ヘスス遺跡
ヘスス遺跡の入口