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PBN No.119コラム「夏期学級「Escuela de Astronauta(宇宙飛行士学校)」」

 パラグアイでは毎年夏の長期休暇を利用し、多くの施設で語学やスポーツなど様々な夏期学級が開催される。昨年夏より、6歳から15歳を対象にパラグアイ宇宙局の後援を受け、新たに『宇宙飛行士学校・Escuela de Astronauta』がスタートした。

 子供たちが終業式を終えた12月、ランバレ市にある学校『Centro Educativo Nuevo Milenio』で火・木曜日の週二日制で始まったこの夏期学級に、多くの受講生が参加した。入学手続きが済むと、揃いの帽子と青いつなぎという、宇宙飛行士さながらの本格的制服が支給される。

毎回、授業の始めにはボーイスカウトチーム有志による掛け声が響く。規律や協調性をリトミックで楽しく学んだあと、講義では機械工学や衛生地質学、天文学の講義を受け、ドローンなどのロボット技術に触れるなど、体験を通じて子供たちはテクノロジーや宇宙への興味を深めていく。

そんな授業内容が広く話題を呼び、一月からはルケ市にある『INAC(“Instituto Nacional De Aeronautica Civil”国立航空学校)』に活動拠点を移し、火・木曜日はINACで、水・金曜日には上記『Centro Educativo Nuevo Milenio』に戻り、週4日の授業が開催されるようになった。

また、受講生は授業の一環として、シルビオ・ペティロッシ空港や軍の航空基地を見学し、最新の航空技術や飛行システムを身近に体験した。

この宇宙飛行士学校の最も特徴的な教育方針は、“リアリティ”である。宇宙局や国立航空学校のサポートを受け、『宇宙飛行士』という現実社会からは遠く離れた存在を、子供たちが身近に感じられるようカリキュラムが作られている。普段見ることのできない空港施設や、空軍施設を目の当たりにし、パラグアイの航空技術第一線で実際に働く人の仕事に触れることができる。

学校の姿勢は宇宙飛行士という夢は遠い世界の話ではなく、リアリティをもって子供の夢に真剣に向き合い、受講生たちの想像力を豊かに育むものと感じた。

『ここはパラグアイ、他の国とは違う!』、そんな言葉を若い人から聞くことがある。もちろん、アイデンティティを持ち、その違いを誇りに思うのは素晴らしいことだ。けれど時として、この言葉はネガティブにも使われる。そんな時、国の教育方針や習慣に少し物申したい気分になる。

パラグアイでは、大きな夢を抱くことは難しいことなのかと感じることすらある。だからこそ、『宇宙飛行士学校』が示す教育の在り方が、次世代への風穴となり、可能性を生み出すのではないかと、期待したい。

パラグアイの現実社会は、時としてカンバスに夢を描くより、ノートを指示通りに書き写すことが良しとされる。出されたものを消化することに慣れ、安定した職を目指そうとする若者たちを目にすると、冒険や新たなチャレンジを試みる好奇心や探求心をもっと、大切にしてほしいと思わずにはいられない。

子供の興味と関心を育み、パラグアイから世界へ羽ばたく人材を育成しようという意気込みを持つこの学校は、この国の教育の異端児であると同時に、政府機関のサポートを受ける国家プロジェクトであるということにも注目したい。

最新技術を扱う宇宙飛行士の育成現場で、コンピューター上の経験値よりも実体験を重視する『宇宙飛行士学校』。あくまで、肌を通してテクノロジーに向き合うその姿勢に共感を覚える。夢を持つことを肯定し、子供たちの想像力を育み、未来を築く力ではないだろうか。未来の宇宙飛行士が、国を超え宇宙に羽ばたく日に期待を込めて。 TT

Escuela de Astronauta

https://www.facebook.com/edastropy

シルビオ・ペティロッシ空港の管制塔にて

航空基地を見学

シルビオ・ペティロッシ空港の管制塔にて

揃いのユニフォームの未来の宇宙飛行士達

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