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PBN No.116コラム「“デング熱騒動”から伺える、パラグアイの実態」

 パラグアイの“デング熱騒動”は今年も続いている。これは毎年、蚊の発生が増える夏に、都市部を中心に見られる現象である。

 先日の報道データによると、約2,000件のデング熱感染者がおり、9名の死亡が確認されている。

 現在、中央政府や市、そして各関係官庁が対策を実施し、様々なメディアからも注意勧告が出されているが、根本的な長期的対策では無いようだ。

 デング熱は、発症者の血を吸った『ヒトスジシマカ』によって媒介、感染するものだ。従って、デング熱を予防する鍵は、蚊対策であり、街の清掃と防虫・殺虫にある。

 街の清掃に関しては、調査すると様々な課題が出てくる。一つは教育と生活習慣が原因の“ゴミのポイ捨て”である。大きな規模では、粗大ごみ回収業者が有料で回収したゴミを、処理せず空き地に放置するなど、日本の常識では考えられない事が横行している。

また、学校ではゴミ箱以外にはゴミを入れない生徒が、一歩、校外に出ると人が変わったように躊躇せず“ポイ捨て”をしてしまう。同様に、企業では“5S”教育が進められ、実際に実施する企業も少なくない。しかし、学校や会社を出ると、身に付けたこれらの行動を一切実施しないように見受けられるのが実情だ。

一方、国が成長し、都市圏人口が増える中、ゴミ問題が深刻化するのも事実だ。最も多い蚊の発生源である、管理が行き届いていない空き地もその原因の一つである。空き地に掛かる税金・地租税が少ないためか、多くの人が不動産を資産として所有している。しかし、その多くは管理されず、草が伸び放題、ごみが投げ込まれ、最終的に蚊の発生源となってしまっている。

 防虫や殺虫は、殆どが個人レベルでの対策であり、公機関である国家感染病撲滅局(SENEPA)が行う殺虫消毒は、不定期かつ全市街対象では無い。それも時に、民間業者に依頼している。そして各家庭の日常生活では蚊取り線香、電気蚊取りマット(液体式含む)、スプレー式の虫除け、シトロネラオイルを用いた清掃などが一般的な蚊除け対策で、一部、虫除けブレスレットなどの輸入製品も使われる。

 このような中、“風が吹けば桶屋が儲かる”式の関連ビジネスの成長も様々なところで見られた。

 ゴミに関しては、リサイクル活動が蚊発生対策に一役かっている。我が国もゴミリサイクルが進み、プラスチック容器などが、全て積極的に収集されている。

ガラスはリサイクル工場がアスンシオン近郊にできたのだが、重量の理由からか、それほど活発な収集が見られない。

もう一つやっかいなのが“車の古タイヤ”である。野ざらしにすると中に水が溜り、蚊の絶好の繁殖場となる。粗大ゴミや産業廃棄物を環境に優しく処理、また活用するビジネスモデルが現れれば、ゴミも減り、衛生面でも改善が図れると思われる。

 また、蚊の防虫・殺虫では関連製品を製造する企業が成長し、国外からも様々なアイデア商品を輸入している。また、蚊取り線香などの国内メーカーは、隣国市場も開拓し、輸出を拡大している。

 そして、いつものテーマだが“人々の教育や意識改革”が、衛生的かつ、住みやすい社会をつくるのに最も求められる課題であり、時間と努力を必要とする。今後を期待したい。YM

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