PBN No.83 コラム「パラグアイの経済と教育事情」
近年マキラ制度を活用し、またパラグアイの安価な労働力と低い税制を求め、ブラジルや日本企業が続々とパラグアイに進出している。今後2、3年は、この傾向も継続すると思われるが、若年層の失業率が高いパラグアイには[1]、二次産業の企業進出は大変望ましい。
進出企業にとっても必要な人材確保は必要不可欠で、パラグアイ社会にもたくさんのプラス面をもたらしている。しかし、長期的には政府にたくさんの課題も残している。
一昨年の統計では、我が国の若年労働者の平均就学年数は9年を下回る[2]。また彼らの平均収入も彼らに特別なスキルが不足、また若年労働力の余剰現象などから、南米諸国の平均最低賃金の1.2倍以内に留まっている。この若年労働者の平均就学年数を低く制約するのが経済的要因であり、若年層が就学を延長できない理由の6割以上は経済的要因が占めている[2]。
従って労働者の平均所得を高める、もしくは教育費および養育費を下げねば就学年数は伸びず、また就学年数が伸びねば所得も増えないという悪循環に陥り、それから抜け出せない。もちろん平均就学年数が全く停滞している訳ではなく、2007年、2011年、2015年のそれは7.52年、8.15年、8.75年、と上昇傾向にある。
この問題の打開策として、政府は更に教育予算を増やし、PBN39号の『教育クオリティの改善』に取り組む必要がある。その打開策なしには、国の発展はおろか、今の状況を維持する事も難しくなるであろう。
2015年度の国家予算では、パラグアイの教育予算は対GDP比で4.28%にとどまり、ブラジルとアルゼンチンの5.55%と6.63%と比較しても低い[3]。昨年、中高等部の学生が教育予算を対GDP比で7%に引き上げるようデモで訴えたが、教育予算の増額が望まれる。
同時に、政府は財源確保のため、累進課税やその他の税法改革が必要な時期に来ている。今年、国会では大豆輸出に対する新課税を審議しているが、国の前進には多少の痛みは耐えなければならない。是非、輸出税案のみならず、教育予算や税改革につき、将来のパラグアイを考え十分に審議してほしい。
当地日系社会は昨年、移住80周年を迎え、パラグアイ日本人会連合会は今後の方針を見直すため「パラグアイ日系人人口センサス」を実施している。これに並行し、日系社会内部および日系人の教育事情を見直し、長期的なプランを練ることが日系社会、延いてはパラグアイの将来を考えるためにも重要であろう。
[1]http://www.cadep.org.py/uploads/2015/12/Insercion-de-los-jovenes-26marzo.pdf [2]http://www.dgeec.gov.py/Publicaciones/Biblioteca/educacion/educacion.pdf
[3]https://www.nodal.am/2017/06/paraguay-pais-menor-gasto-social-la-region-segun-informe-la-cepal/