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PBN No.186コラム『選挙へ行こう!「在外選挙制度」』

 先月21日に投票が行われた第25回参議院選挙、その投票率は戦後二番目に低い48.8%だったという。

 日本国憲法前文及び第一条が定める国民主権から読み取れるように、日本という国は、国民一人一人の声を反映した社会を目指す民主主義国家である。「主権」、日常生活において馴染みの薄い言葉ではあるが、これは統治権や、決定権を示しており、国民主権とは、国民がその権利を持つことを意味している。


 選挙権を有する国民が、政治決定に携わる主権者となるということで、日本国憲法は個の基本的人権を示しているのである。基本的人権はただ単に与えられるものではない。私たちは主権者としての自覚を持ち、それぞれが未来を見つめ、政治決定に携わることで初めて、「人民の人民による人民のための政治」、アメリカ合衆国の第16代大統領エブラハム・リンカーンが語った、民主主義を象徴するこの言葉が実現される。民主主義国家では自由と尊厳が与えられると同時に、私たちは国の決定に対し、ある程度の責任を背負う必要がある。


 私たちには選挙権の行使によって、意思を反映させる義務があるのではないだろうか。しかし、投票率は現状50%に満たない。認識不足か、これでは憲法によって守られた個の尊厳を半数以上が放棄していることになってしまう。

 海外で暮らしていると自身の言動が、日本という国を代表しているかのように感じることはないだろうか?そんなつもりはなくとも、異国の地で出会った人々は、目の前のあなたを通して、日本という国を知ろうとする。国際交流は文化や習慣、国籍を問わず、柵すら超えて行われるものだ。国境すら必要のない人間同士の交流は、それぞれが背景の違いを背負っているからこそ、特別なものとなる。私たちは皆、自分の知らない文化に生きる人々の感受性に興味や憧れを抱いているのではないか。時に個人として、時にコミュニティの中で、時に国を代表して。


 そういった意味でも、ビジネスにおいて、日常生活において、海外に暮らす日本国民として、主権者として、常に自覚と、世界における日本の在り方についての思考を持っていたいものである。海外に暮らし、その土地で日本の写し鏡として、多くの目を向けられている私達の意見を、選挙を通じて政府に届けることは、とても重要なことではないだろうか。

 今回は、パラグアイにいながらにして、投票が行える在外選挙制度について紹介したい。一年滞在の赴任者から永住権取得者まで、誰もが投票ができる制度である。


申請:

パラグアイで国政選挙に投票するためには、まず、日本大使館にて、在外選挙人名簿への登録申請を行う必要がある。在留届を提出すると、誰でもこの申請が行える。パラグアイに滞在していることを証明する書類及びパスポートを持参し、必要書類に記入するだけである。


在外選挙人証:

 名簿に登録されると在外選挙人証が発行される。発行完了の連絡を受けた後、日本大使館で受取をすると、国政選挙の投票が行えるようになる。


投票:

 在外選挙人名簿に登録されると、衆議院議員選挙と参議院議員選挙に投票ができるようになる。基本的には、公示日の翌日から指定の締切り日までの期日前投票となる。詳細は在パラグアイ日本大使館のホームページなどで確認することができる。

 パラグアイに移住して4年になる私は、今回の参議院選挙で、初めてこの制度を利用した。冒頭で考えを述べたように、有権者となってから、主権者の一人として、これまで投票を怠ることはなかった。しかし、パラグアイに移住してからというもの、慣れない生活の中で、制度についてよく調べず、関心を失いかけていた4年の反省を込め、今回、このコラムの執筆に至った。


 大使館のホームページで発表された投票期間に従い、パスポートと選挙人証を持って、投票に向かった。初めての海外での投票は、わからないことばかり、少し緊張していたが、丁寧な案内と、分かりやすい説明を受け、スムーズに投票ができた。

 この制度では、比例区と選挙区、両方に投票ができ、選挙区では日本国内の最終居住地の立候補者に投票する。また、比例区、選挙区共に投票所で候補者名簿を見ながら、投票用紙に記入することができる。

 記入が終わると、それぞれ封筒に入れ、封をし、立会人のサインをもらい、投票は終了する。必要書類への記入、郵送用封筒への署名など、日本の選挙とは少し手順が異なるが、10分もあれば全ての作業は完了する。


 わからないことを人に聞くのは恥ずかしい。ましてや、日本国籍保有者のみに当てはまる制度について教えてくれる人は、海外ではなかなかいない。新しい交友関係の中で、選挙に行きたいなんて言い出したら、少し変わった人と思われるかもしれない。そんな理由から折角の制度もなかなか、利用されずにいるのではないか。私自身がそうだったように。 

 最後に、多様化が進む社会の中で、異なる文化に身を置き、新たな視点を学び、日々、日本の文化や風習を背負いながら生きる海外在住者が、海の外から願う日本の未来についての意見を、主権者として、届けることには大きな意味があると思う。小さな一票、小さな意見が多くの人が暮らす国を、その国を通じた世界を形作り、議論や問題解決の新たなステップとなる可能性を信じ、与えられた自由と尊厳に伴う大切な義務として、社会に関わっていく自覚を持ち続けたい。TT



登録は大使館まで。


在外選挙人証、投票するとスタンプが押印される。


在パラグアイ日本大使館

住所: Avenida Mariscal López No. 2364, Asunción, Paraguay

電話:+595 (21) 604.616

在外選挙制度


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