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PBN No.179 Column『「ちくわ」と見紛う伝統食「Chipa Asador」』

肌寒くなり始める頃、街角には「Chipa Asador」の屋台が現れる。パラグアイで伝統料理が楽しめる季節は、秋と冬。San Juan祭りという冬至のイベントの前後には、様々な伝統料理を街のいたるところで食べることができる。

 その中で一番のお勧めは「Chipa Asador」という串焼きChipaである。パラグアイの国民食として親しまれるChipaについては、皆さん既にご存知だと思う。コーン粉とでんぷん粉で作るモチモチ触感のチーズパンである。この生地を薄く伸ばし、棒に巻き付け焼いたものは「Chipa Asador」と呼ばれている。

 しかし、これが日本人の眼には「ちくわ」にしか見えない。満更冗談ではなく、木の棒に生地を巻き付け、炭火で焼くその製法は「ちくわ」に酷似している。

 言い伝えによると大陸を渡ったモンゴロイドが先住民族として定住した南米大陸へ、ヨーロッパからの入植者が到来し、アフリカ系民族も奴隷として連れてこられた。その後、日本をはじめとする各国の移民たちを受け入れたこの地域では、多くの文化が混在している。アフリカやアジアといった全く接点のなさそうな遠い土地との興味深いつながりを感じることも少なくない。

 例えば、日本語に近い言葉や食文化もパラグアイには多い。日系人が多く暮らしていることからか、芋羊羹にそっくりなDulce de batata、ピーナッツ菓子など日本で見かける食品があたかも伝統料理かのように並んでいる。子供たちの遊び「じゃんけんぽん」は、グアラニー語に当てはめて「Hakembó」となる。

Chipaの原料であるキャッサバ芋は、アフリカでも一般的に食されている。ポルトガル人が南米大陸から、奴隷売買を通じ、アフリカへ持ち込んだという。かつて、この地に多く暮らしていたというアフリカ系パラグアイ人がグアラニー語を話していたという資料も残されている。グアラニー語にアフリカ系言語の特徴でもある「Mb~」で始まる単語が多い事に、遠く離れた土地に暮らす民族とのつながりをふと想像してしまう。

 植民地時代、文化を自らのものとして発展させるのに長けていたと言わるグアラニー族は、それぞれの時代に触れた各国の文化を、今に至るまで、自分たちの文化の中に柔軟に取り入れていたのではないだろうか。もちろん、一番の影響はスペインにあり、グアラニー語はスペイン語を混ぜて話すのが一般的である。学校で習うグアラニー言語は、足りない単語を定義、作成し、新しく作られたものだと多くの人が語る。

 アジアやアフリカとの繋がりは推測に過ぎない上に、「Chipa Asador」が「ちくわ」から派生しているなんて考えは、若干飛躍し過ぎであるが、大陸を移動した人々の歴史や時間について想像するのはおもしろい。

 さて、本題の「Chipa Asador」、秋から冬にかけて各地のお祭り会場や露店などで味わうことができる。平日の不定期営業が多い露店には、なかなか出向けないと言う方には、ショッピング・モールのSan Juan祭りをお勧めする。

 普通のChipaよりも外はこんがりサクサク、中はモチモチ、一度食べたら病みつきになる「ちくわパン」に、この地に受け継がれてきたグアラニー文化を想像しながら、是非ともチャレンジしていただきたい。TT

La Victoria通りの露店。San Pablo地区の3 de Noviembreというサッカー場の前のこの露店は平日夕方17時から焼き始める。写真の様に車に乗ったまま注文できる。

見た目はまさに「ちくわ」。その他、近郊ではNazareth地区のNazareth教会の裏に、平日夕方以降、週に2回ほど露店の出店がある。

Butifarraというスペインのカタルーニャ地方をルーツとするソーセージは、レモンのさわやかな香りが広がるおススメのSan Juanメニュー。

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