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PBN No.167コラム『リサイクル楽器のオーケストラ「カテウラ楽団」』

世界の人々に「パラグアイについて知っているものは何?」と聞けば、健康ブームで多くの人が知る“マテ茶”や、ファッション業界注目の伝統的刺繍工芸“ニャンドゥッティ”などの答えが返ってくるかもしれない。そんな中、一番新しいパラグアイの文化として、リサイクル楽器のオーケストラを挙げる人もいるのではないだろうか。

2015年に、『Landfill Harmonic』と言うドキュメンタリー映画が公開された。パラグアイのスラム街から世界へと羽ばたいたリサイクル楽器のオーケストラ『カテウラ楽団』を率いる、Favio Chavez氏のドキュメンタリー映画である。ごみ処理施設も満足に無いパラグアイでは、アスンシオンから出たごみは“カテウラ”地区に集められ、同地区にはゴミが溢れ、そこにはゴミ拾いで生計を立てる家族が暮らす。

そんな様子を見た環境技師Favio氏は、そこの子供たちに同じ道を辿らせたくないと、その地でプロジェクトを立ち上げた。もともとはゴミの分別について指導する目的で彼はそこを訪れたが、彼の趣味のギターに子供たちが興味を示したことから、音楽を教えることにしたと言う。“楽器を教えます!”という張り紙を地域に張ったところ、多くの子供たちがやって来た。しかし、貸し出せる楽器は数が限られていた。そこでその地区に集まるゴミを利用し、楽器を作ることにした。地元の技術者の協力を得ながら、リサイクル楽器が誕生していった。

 貧しく、衛生環境の悪いカテウラ地区では、子供達に多くの問題が忍びよる。成長とともに皆、ギャングの様に姿を変えていくと語る子供もいた。そんな街で音楽と言う“逃げ場”を得た子供たちは、音楽に没頭する事で自分たちの居場所を見つけていく。映画の中で語られる子供たちの言葉は重く、観る者の心に強く響く。

 このドキュメンタリー映画をきっかけに、楽団はどんどん知名度を上げ、現在では世界各地で公演を行うようになった。昨年末には、日本も訪れた。それらの興行収入から、子供たちは就学のチャンスを得た。厳しい現実の中でも夢を見ることを、私たちに音楽を通じて伝えている。

3月8日、アスンシオン・セントロの“Alianza Francesa”で、カテウラ楽団のコンサートが行われた。楽団の子供たちへの支援を目的に、elpoliglotaが主催したコンサートだ。会場には約150人の観客が詰めかけ、ほぼ満員となった。

 楽団はバイオリン、チェロ、コントラバス、フルート、サックス、トランペット、ドラム、エレキギター、などで構成されている。これらすべてがゴミから生み出されたリサイクル楽器である。アイデアと遊び心が見られるリサイクル楽器は、一つ一つが芸術作品のようで美しい。

 奏でるのは9歳の少年をはじめとする楽団員たち、指揮者はMCを中心に観客をリラックスさせながら、カテウラ楽団について、楽器について紹介しながらコンサートは進行する。クラッシック音楽にドラムを用い、手拍子を求め、コントラバスを指で弾いて、盛り上げる様子はとても明るく、心地良い。フランク・シナトラの“My Way”や、ジョン・レノンの“Imagine”などスタンダードナンバーを披露すると観客たちも手拍子で応える。また、Música Paraguaya(パラグアイの伝統曲)やラテンビートなど、世界でも受けがよさそうなセットリストにも好感が持てた。


3月8日のコンサートポスター

観客をMCで盛り上げ、ステージに上げて行うコンサート、できればもっとステージと客席の近い場所で鑑賞してみたいものだ。路上やカフェも良いかもしれない。子供たちは恥ずかしそうに、初々しさを見せながら演奏している。個人的には、一度、観客が歌い踊る環境で、恥ずかしさを吹き飛ばすほど笑いながら演奏してみてほしい。その方が、リサイクル楽器の良さも際立つように思えるが、いかがだろう。

 ともあれ、パラグアイから世界へと羽ばたき、多くの人に夢を見ること、創造することの素晴らしさを気づかせてくれる『カテウラ楽団』、パラグアイの近代文化として、多くの人に認知していただきたいものである。IT


カテウラ楽団 Orquesta de Reciclados de Cateura


リードするのは9歳のバイオリニスト

客席から代表でステージに上げられた男の子。

物怖じせず立派に演奏した。

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